バラ材について
園芸上の通常の剪定・整理によって生じたものを自然乾燥させて材にします。花を咲かせてのバラなので、材をとるためにあえて幹や枝を切る、というようなことはしていません。
乾燥については、バラ材は径が小さいこともあり、比較的短時間で水分が抜けて使用可能になります。作例では、剪定後数ヶ月程度の乾燥で製作しているものも結構あります。径にもよりますが、1年たてばまず十分という扱いです。
乾燥過程での割れは少ない印象であり、外形2センチ程度のものであれば、全周割れなく使えることも多いです。
バラの木は、樹心(髄)が相対的に大きく、しかも非常にもろいため、基本的に、作品に樹心が残らないようにする必要があり、材としての利用可能性が大きく制約されます。
また、幹や枝が湾曲・屈曲していたり節が多いところなどは、工作上の工夫が要求されます。
バラは、一見軽軟な印象ですが、私の測定では、厳密とは言えないものの、比重が0.65~0.8ぐらいで、重い部類に属すると思います。
見た目より強度があり、しなやかで折れにくい印象です。作例では、強度を高めることも意図して塗装を施しています。
バラ材の木肌は緻密で繊細な印象です。年輪はあまり目立たず、木口面に放射模様が顕著に見られます。横断面(柾目面)には放射模様による斑状の模様が現れます。模様や色合いは、材によって違いがあるようで、総じて淡いものとなりますが、濃淡の強いものや、とくに古木では、部分的に黒っぽく着色(変色)しているものもあり、時にそれ自体がモチーフとなります。
唐木のローズウッドとは異なり、特別の芳香は感じられません。
なお、バラの材としての耐久性や安全性(アレルギー性の有無、肥料や薬剤の影響の程度など)については私に特別の知識はありません。
(注)バラ材は、バラの木の剪定材ですから、当然バラ科の植物です。一方、ローズウッドという木材がありますが、これは紫檀などと同じで、マメ科の植物です。比重が1近くある、非常に堅い木材です。材を切断したときの芳香が、バラに似ている、としてローズウッドと称されているもので、植物としてのバラとは全く関係ありません。ローズウッドからはバラの花は咲きません。
エブリンの枝の顕微鏡写真
photomicrograph of Evelyn’s branch
製作と塗装について
作例は、すべて自宅の庭のバラから得た材を用いています。
工作上の制約が多く、製材過程から独自の工夫が要求されます。ノコギリなどの手道具のほか、電動工具も多く使用しています。旋盤などのほか、ベルトサンダも多用します。
いわゆる伝統工芸風ではなく、ともかく形を作り上げることに力点が置かれます。
バラは、大きな木材がほぼ採れないので、採れる材以上の大きさの部材が必要になった場合、小さな部材を接合する、という形で作ります。櫛は、その典型例で、模様的な面白さも得られていると思います。
接着は、ほとんど、一般の木工用ボンドによります。
塗装は、バラ材の強度と耐久性を高めることを重視して、寿化工株式会社の「木固めエース」と「仕上げクリヤー」をメインに使っています。バラは広葉樹なので、同社の2液混合型のほうがより適合的かもしれませんが、扱いやすさから木固めエースシリーズを使っています。
塗装においては、着色・調色・描画などは一切行っていません。作品において見られる色合いや模様は、もともとのバラ材にあったものです。
免責
バラ材及び工作の安全性について、私は一切の責任を負いかねます。バラで木工芸作品を製作される場合は、自己の責任においてなされますようお願いいたします。
About woods of roses
All woods used here have been got by normal/seasonal pruning or trimming of rose trees. No cuttings have been made only to get wood materials.
I think woods of roses (“roses” for short) are relatively easy to dry. In many of my works I used roses about several months after the cuttings.
Because usually roses don’t grow much big, and the pith of the wood is relatively big and very fragile, usability of the woods is significantly limited. It may require some original technique to make rose works.
The relative density of roses is 0.65~0.8 in my measurement.
My impression is that roses are relatively tough. They are rather flexible and hard to break. In my works reinforcing coating is also applied.
The grain of woods looks fine. Annual rings are not so conspicuous and wood rays are prominent. The texture is usually faint but sometimes contrasting patterns are detected. Some woods have attractive dark-colored parts.
No specific fragrance is detected.
I haven’t confirmed durability or safety (allergy, effects of fertilizer or chemicals, etc.) of the woods.
There is wood called “rosewood”. But it is a leguminous plant and it has nothing to do with rose as plant. The rose wood materials I used here are pruned materials of rose trees, not “rosewood”.
Comments
All woods used here have been got in my garden.
Several hand tools and power tools are used. For adhesion, I mostly use woodworking bonds.
In painting the works, coloring, toning, drawing, etc. are not done at all. The colors and patterns seen in the works are those that were essentially found in the original rose wood.
Important
I take no responsibility for anything about rose craft. Please be careful if you are going to make a rose craft.