バラの花車の製作 2:構想・準備(2)

写真は、京都府宇治市の、源氏物語ミュージアムの再現牛車です。

なおこれは、実車画像をブログに載せるために、製作後に撮影に行ったものです。

牛車全体をバランスよく写すのはなかなか難しく、後ろからの構図となりました。室内で、かなり暗かったので、画像処理で明るく処理しています(こういった場合RAWでの撮影は便利です)。

源氏物語ミュージアムの牛車は、金具による装飾もほとんどなく、簡素な造りです。また葵祭や時代祭の牛車と異なり、おそらく一人用の小さなものです。個人的にはこれはこれで好ましい感じがします。

牛車には、その部分部分を表す独特の用語があります。花車に関連する限りで、調べたものを書き込んでみました。

牛の肩にかかるところが、軛(くびき)、軛から車輪側に伸びる腕が、轅(ながえ)です。

軛の乗っている台は、榻(しじ)といいます。

複雑なのは、車輪です。

車輪は、多くの部材の集合体となっていて、輪を構成するのが、大羽(おおば)と小羽(こば)です。中央には轂(こしき)があって、中心を車軸が貫通し、楔のようなもので留められています。轂から大羽・小羽に放射状に輻(や)が伸びていて、スポークになっています。

大羽・小羽と輻の関係には、構造上の決まりがあります。大羽と小羽が互い違いに合わさり、輻が小羽を貫通して大羽に嵌ることで、大羽同士がしっかり結合します。それが輪になることで、全体としてがっちりと組みあがる、という仕組みです。

つまり、輻は、小羽の両側と、大羽の中央に嵌るわけで、大羽1枚につき、輻は3本という関係になります。

これは現代でも、木製車輪一般に広く見られる構造だと思います。祇園祭の山鉾の車輪も確か同じです。

大羽の枚数は、7枚か8枚が一般的とされています。つまり、輻は21本か24本、となります。

このタイプの車輪は、部材をばらばらに分解できる構造です。どうやって分解し、どうやって組み立てるのか、詳細はどういう組み合わせ方なのかまでは、あまりよく知りません。

車輪については、屏風絵などの2次元の表現では、構造的に正しいもの、意匠的に省略があるもの(輻の本数が少ない)などさまざまです。また、3次元の模型でも、小さいものはたいてい省略・改変があります(多くの場合、車輪のドーナツ状の部分は樹脂あるいは一枚の木材からの成型です)。

バラ工芸の場合、剪定材というサイズ上の制約から、車輪を大きな木材からドーナツ状に削り出すことはできず、はじめから、大羽・小羽をそれぞれ作って接合するタイプにならざるを得ません。それならば、バラ工芸の制約を逆手に取って、車輪については少しこだわってみようと考えました。

とはいえ、車輪の構造を、小さなサイズですべて再現するのは困難で、精度的にも不利になります。分解できるレベルまでにする必要はない、というのが私の考えですが、その雰囲気(外観)はなるべく維持したい、というのが車輪に関する要求となります。具体的には、大羽・小羽の枚数と組み方、輻の本数と位置、轂の車軸への留め方、が外観上実車に即していることを目標としました。

次回は、以上をもとに、実際のバラの枝をもとに設計をしていきます。

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