バラの花車の製作 14:車輪(10)

まず車輪外輪の仕上げを行います。

デザインナイフ(平刃:刃幅は研削して調整)で車輪の大羽・小羽の境に V 状の溝を彫ります。

内側に穴を開ける下準備をします。
Excelで製図した正21角形と、外輪の内径に合わせて製作したプラ円盤(実測1.9mm厚)です。

穿孔場所をマーキングをします。

大羽中央に1箇所、小羽には2箇所ずつ。
プラ円盤を合わせて表裏から線を引いた後、正21角形の上で各点をマーキングします。

自作極短ポンチでポンチングします。

さらに自製極短キリで、ポンチ穴を拡大します。

この後、極短ドリルを使って穿孔していきます。もちろん市販ドリル等を加工した自製です。

下が自作した極短穿孔工具です。

星型の特殊ネジ(トルクスネジ)用先端ビットの中央部に都合のよい凹みがあったので、ドリルの土台として使っています。
掘り過ぎないようにマスキングテープが巻きつけてあります。

 

指で直接ドリルを回すのではなく、下の道具を用います。

ハイスピードドライバと閉所用傾斜型ホルダ

ハイスピード・ドライバ、及び閉所用傾斜型ホルダです。本来は奥まったところのネジの締結/弛緩に使う組み合わせです。別サイトで詳細をご紹介していますので、ご参照頂ければ幸いです。

このホルダに極短ドリルを差し込んで、外輪内側に穴あけができるであろう、というのが当初からの目論見でした。

閉所用傾斜型ホルダと極短ドリルによる穿孔

このような形で、目分量ながら、垂直に穴あけできるのではないか、という構想です。

1mm、1.2mm、1.5mm、2mmの各ドリルで穿孔していきます。

輻が2.2mm前後なのに対して、穴の最終径を2mmとしたのは、輻を圧縮気味に穴に挿入することで、接着剤を使わない(後で調整の余地がある)でもしっかり固定できるであろう、ということでした。

この方法、結論的には、「まあまあ」でした。この自作ホルダは工作精度が若干甘く、ドリルによる穿孔作業に使うには、少々精度不足だったのかもしれません。あるいは目測での垂直出し、が楽観的過ぎたかもしれません。ずっとあとで付けが回ってくることになりました。
接合強度を出すために、穴を硬くしたことで、穴の穿孔精度が想像よりシビアでした。

穴あけの終わった状況です。結構深く開いています。

再び旋盤にサンディングロールを取り付けて、軽く擦ってバリを除去します。

バリを除去しました。

 

やや長くなりました。次回は、車輪の組立ての予定です。

バラの花車の製作 13:車輪(9)

今回は、輻(や)の製作です。

やや細めで直線状の枝材を、2分~4分し、直径約2.2mmの丸棒を作ります。

ベルトサンダーで荒く丸くして、ドリルチャックを介して旋盤に取り付けます。

指で支えながら、曲面用布やすりなどで丸くしていきます。きわめて細いので、刃物による切削は不可能です。摩擦で熱くなるので火傷に注意します。
多少撓むことがあっても大丈夫なのが木材のよいところです。

削り出し終了です。余裕を見て多めに製作しましたが、明らかに多く作りすぎました。

この後、木固めをして狂いを防ぎます。

これを短く切断して、車輪外輪に差し込んでいくのですが、その前に、車輪外輪を仕上げなければなりません。


特に、外輪の内側に、垂直に穴を開ける工程がポイントになります。

いったん車輪をばらして、一つ一つ穴を開ける方法もありますが、小さな部材に(特に方向が)正しく穴を開けるのは難しく、また再接着がきれいにできる保証はありません。

せっかく旋盤できれいな円に仕上げているので、円盤のまま穴あけをします。一般には、穴あけ困難な場所ですが、私には構想の段階から、腹案がありました。

 

次回は車輪外輪の仕上げと穿孔を予定しています。

バラの花車の製作 12:車軸(1)

車軸は、強度や他の部分(轅などのフレーム部)との接合性などから、車軸の中央部を四角柱状とし、そこから車輪のはまる円柱状の両端部が左右に出ている形状にしました。
牛車でも、車輪は車軸の周りを回りますが、車軸自体は回りません。

ニュー・ドーンの剪定材から切り出します。

半分に切断し、厚い方を髄がほぼ消えるまで研削して、厚い方同士を接着します。

 

その後、轂と同じ要領で、旋盤で穴を開けます。

ベルトサンダーで、四角柱に整形して、四角部はいったん完了です。

円柱部を作ります。

エブリンの剪定材です。

材を節約するため、1/4だけ切り出します。

この切り出し作業は糸鋸盤では難しいので、従来のやり方になります。

ベルトサンダーで丸く荒整形した後、旋盤に装着して円柱にします。

所定の径になった円柱部。

円柱の先端に、車輪留め(楔)が入る穴を開けます。

彫刻刀を研削した自製ノミで、車軸先端部に穿孔します。

さらに端材から、車輪留めを作ります。

デザインナイフで切り出しました。程よい硬さ(抵抗)で車軸の穴に止まるように少しずつ削ります。

この後、車輪留めの端部に 0.6mm の穴を開けて、房(タッセル)を付けることができるようにしました。純粋に模型的に飾る場合は、大きめの房を付けると華やかになります。花車の実車として使う場合は、房はむしろ付けない方がよいように思います。

 

次回は、車輪に戻り、輻の製作に移りたいと思います。

バラの花車の製作 11:車輪(8)

轂(こしき)の製作にかかります。

大羽・小羽を切り出した枝材の太い残り材から、樹心を含まない無垢の塊を二個切り出します。

サンディングドラムで外皮を取り、荒く丸めます。

旋盤で、中心穴(4.5mm)を空けます。穴径は、加工してマンドレルとして使う長ボルト(先端部のみネジが切ってあり、中央部は円柱になっているタイプ)の、円柱部の径が実測4.3mmであることによります。

私は、不定形の、垂直のとれていない材で、しかし穴の中心は前もって決めておく、というような場合、穴あけにはボール盤ではなく旋盤を使っています。材の両側から交互に掘っていき、中央部で貫通するような穴のあけ方になります。
材は、左手でしっかり支え、右手で心押しハンドルを回して穴を掘ります。このやり方は、「ミニ旋盤を使いこなす本」(久島諦造著)の105ページに載っているやり方を、木材に応用させていただいたものです。

穴が開いたら自作マンドレルを通し、旋盤で円柱に加工していきます。

旋盤のチャックに近いところには、スペーサーが入っています。

円柱状に加工した轂材と、自作マンドレルです。
マンドレルは、六角ボルトの六角部分を落とし、ネジ部分の先端を、旋盤とセンタードリルで V 字に凹ませたものです。ボルトの規格としては M5 だと思います。

ここから、旋盤らしい加工となって、轂の形を作っていきます。

これを2個、できるだけ同じ形に作ります。

まだ端面の処理などが終わっていませんが、いったん木固め(「木固めエース」による塗装)を行います。

轂は、工作の都合上、あとの段階で表側と裏側に切断します。

 

次回は、車軸部分を作る工程の予定です。

バラの花車の製作 10:車輪(7)

まず、ベルトサンダーを使って車輪の外周の角を取り、「大体丸い」状態にしておきます。角が残っていると、刃物を当てたときに接着部から破損する危険があります。

この後、旋盤に装着するわけですが、外周切削用に、下のような治具をあらかじめ製作しました。製作にはもちろん旋盤を使います。

径の太いマンドレル、といってよいと思います。

左側の本体はマホガニー無垢材です(端材というには贅沢すぎますが思い切って使いました)。車輪内径にあわせた中心軸には緩やかなテーパーがあり、MDFなどで製作したスペーサーにより、車輪を緩みなく装着できるようにしてあります。

車輪を装着します。

これを旋盤に取り付けて、車輪外周を削ります。ここは木工旋盤用の刃物(バイト:主にスクレーパー)を使います。

概ね設計の外径に近づいてきたら、曲面用布やすりで研削して目的の外径にし、さらにスポンジやすり(スポンジ研磨材)で磨き上げて仕上げます。

 

外周の研削・研磨が終わると、再び板ガラスの上に紙やすりを敷いた上で研削し、目的に厚さに仕上げます。

スポンジやすりで表裏両面を磨くと、車輪外輪の製作は一区切りつきます(まだ終わってはいません)。

 

次回は、車輪中心部の、轂の製作過程を予定しています。